なかなか難しい。ですが、その年代の変化が社会に及ぼす影響力は大きいので、やりがいや達成感はありました。私自身、リカレント教育に携わる際にその難しさは実感しています。新しい技術や商売、科学が出てくる中で、どうしてもそれを吸収しきれない中堅層の問題がありますね。 本当に難しいですよね。変わりたいと思わないと、人間は変われないので。そういうきっかけをつくっていくしかないですよね。外の世界に出て、いろんな価値観を持っている講師の話を聞き、世の中の変化を実感すること。きっと自分の体験の中でしか人の価値観って変わっていかないので。 そういった世の中の変化を自分ごととして考えられるかですよね。身近なところから、「それで本当に大丈夫なんですか」と。たとえば会社なら、「それで部下は本当に辞めていってないですか」「みんなはモチベーション高く仕事してくれていますか」という。振り返って、家庭を見ても、「自分の子育て大丈夫ですか」「それで本当に自分の子供たちは幸せに生きていけると思いますか」ということを問い続ける。それをコーチングでは「かんざしをさす」と言います。すぐには答えがでなくても、その人がずっと考え続けるようなクエスチョンを与え続けることが大事なんです。何か上手く刺さる質問があると、「本当にそれでいいんだろうか」と、その人もずっと考え続けることができる。そのあたりがコーチングの醍醐味でもあります。本当にこれでいいんだろうかと考え続けるような質問をうまく投げかけられると、どこかでその人も気づくことができますから。今回の受講者、あるいはこのプログラム自体に対して、今後期待することがあれば教えていただけますか。 やはり座学で終わる事なく、しっかりと実践につながっていくことですね。何か少しでもいいから、地域に新しい変化が起こっていってくれるのが一番というか。そのための講座でもあると思いますので。ただ聞いて終わりではなくて、実践をしたことや、自分たちが行っていることをシェアするなり、相談するなり、そういうことを継続的に行っていくようなものになると、まさに地域のためになると思います。これからは「地域創生のイノベーターを育成する場をつくる人」を育成するプログラムが必要ではないかという話がありますが、こういう人を入れたらどうかなど、アドバイスをいただけますか? おっしゃるとおり、イノベーターって、育成されてできていくものでもないというか、起業する人は起業しますし。何かをやる人はやるんですよ、本当に。では、そうでない人たちをどうするかという問題ですが、神山を見ていて思うのは、大南さんたちが取り組んできたことがやはり王道というか。それこそ今、正本先生もおっしゃったように、イノベーターがうまく育っていくような場をつくることができる人たち、そこを理解した人たちを育てていくのが大事なのかなと思います。それこそ大南さんたちのような、誰に対してもフラットで、変な色を持って人を見ない。しっかりと新しい考えを受け入れたり、変化を受け入れたりできる人たちがいる場であれば、新しいアイデアを持ったおもしろい人たちが来て、育っていくのかなと思います。 それから、しっかりとした風土をその場所につくっていくことですね。そういう新しいものが生まれる文化、風土をつくっていくことが大事かな。地域の役割として、その風土、土のほうですよね。新しいものを受け入れるような柔らかい肥沃な土をつくっていくことで、外から風のようにやってきて、種を落としていってくれて、その種が育っていくような場所ができていくと思うんです。凝り固まった、本当に保守のままでは、おそらく衰退していくだけになってしまう。やはり次の世代につなげていくためには、そういう柔らかな肥沃な土を、土壌をつくっていくことが地域の役割になる。そうでないところは、衰退していくしか道がないのではと思います。 じゃあその種がいつ落ちるのか、いつ芽が出るのかっていうのは、蓋を開けてみないとわかりません。ある意味、賭けみたいなところもありますが、そこをしっかり思いを持って、しっかりと待つことができる人たち、それを理解して、協力していけるような人たちを育てていくことが、こういうプログラムの中で大事なところです。本当にそこの地域のことを思えば、そういう理解者、応援者を育てていくことが鍵になってくるのではないでしょうか。では最後に、受講者へのエールをいただけますか? 今お話ししたとおりで、必ずしもみんながみんなイノベーターというか、起業家やリーダーにならなくてもいいと思っています。ただ、そのリーダーをしっかりサポートするフォロワーの人たちも本当に大事な存在ですから、自分の果たすべき役割をしっかりと考えていってほしいですし、一人ひとりが、その地域のことを思って行動していくことが大事です。やらされるのではなく、やらねばならないことだからでもなくて、自分がやってみたい。それで結果として地域に貢献できることを、それぞれが何か見つけて取り組んでくれたらと思います。09
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