ジンがなくなっています。その当時と同じようにやろうとしたときに、地域住民は、「あれ、なんか違う」ということになってきているのかなという気はします。今回の講義で力点を置いたところはどこですか? 力点としては、できるだけ多くのプロセスについてお伝えしたことかなと思っています。「これをやれば成功します」というものではなくて、「我々はこういうプロセスで、こういうふうに進めていって、こういう結果が出ました」という実態をお話しできたかなと思っています。これがもし架空の話であれば、あまり意味がないと思います。私の持ち味っていうのは、とにかく実践していることなんですよ。経営大学院へ入学する前は、いわゆる経営者でずっとやってました。現在、4自治体の取り組みに関わってますが、自治体は面白いんですよ。民間から見てもすごいなと思います。あれはあれで洗練された形ではあるんですが。 地方自治体の仕事は、完成した仕事の仕方があるから、なかなか変わりづらいところがあります。ですが、そこは挑戦しがいがあると考えています。そういう意味では実践ですよね。一番過酷なところで実践するということ。OODAループで言うところの、自分は「強行偵察」なので。「強行偵察」に行ってみて、「大変な思いをしながら、こういうデータが取れましたよ」という感じで受講者のみなさんにお渡しできる。同じ失敗をしなくても済むという形で解像度が上がっていくのではないかなと思います。自分の屍を踏んでいってもらうのが一番いいですからね。自分としては、本当に実践には力点を置いているので、実践においてはいくら質問されても答えられるかなと思います。 ただし、「自分はこうやって成功しました」というのは、その人だからできたこと。私も含めイノベーターの人ってオンリーワンなところがあるので、その人の「こうやったらいいんだよ」は、そのまま鵜呑みにしないほうがいいんですよ。ですから、私は実践の部分をなるべく体系化したいなっていうのはあります。私は人に話せるだけの抽象度と体系化を意識して、汎用性があるように伝えることに重きを置いています。今後のプログラムに対して何かアドバイスをいただけますか。 そうですね。長期のプロジェクトがあったほうがいいかなと思っています。単純に講義を聞いただけでは、なかなかインストールという形にはなりづらいので、少し長期でプロジェクトをやりながら、自分が変わっていくのを楽しめるというのが1つ大事かなと思っています。 私たちも多くの企業と一緒に取り組みを行っていますが、「プロセスを変えましょう」ということを企業と話しています。今、どの企業も困っているんですよ。「作っても作っても売れないんだけど」といった悩みですね。どうして売れないものができるかというと、プロセスが一緒だからなんです。プロセスが一緒だから、同じものが出てくるということです。だからこのプロセスを何パターンか試しましょうよと提案します。プロセスを何パターンか試したら、自分に合うプロセス、業界に合うプロセスというのが見えてきます。今後、世の中はコロコロ変わっていくので、常にプロセスを2、3個持ちながら臨機応変に変えていかないといけない。1個のプロセスに固執してしまうと、出てくるものも全部一緒ですよっていう話を企業といっしょにしています。 今後の教育に関しても、このプロセスを何パターンかインストールできるみたいな感覚になると、自分でリラーニングしていけたり。変えていけるのではないかなと思います。最後に、受講者に向けてのメッセージをお願いします。 リアリティを持って受講されている方って、結構いらっしゃるんだなと実感しました。質問を聞いていると、すごく伝わってきたところがあって、何よりそれが大事だなと思っています。普段、現場やいろんな会社で仕事をしている中で、「おかしいな」「こうあったらいいのにな」という感情を最初はみんな抱くんですが、だんだん慣れてきて感じなくなってくるんですよね。これが十何年も溜まってしまったのが、日本の現状だと思います。やはり違和感や疑問というのは持ち続けることですよね。本当にそれをどうにかしたいという思いで今回のような講義を受けてらっしゃると思うので、そこをしっかり持っていただく、忘れないようにしていただくという感覚がすごく大事だなと思います。 13
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